DVD 東映 2003/04/21 ¥5,460 『池袋ウエストゲートパーク』では池袋の息吹を体現した窪塚洋介が、渋谷のストリートに生きる若きナショナリストに扮したトリッキーな話題作。窪塚が企画段階から映画製作に参加した入魂の一作だ。 反米思想を持つ山口(窪塚)ら3人は、ナショナリスト集団「ネオ・トージョー」を結成、白い戦闘服を身にまとい、渋谷で街の掃除=チンピ…

小説の方は大変面白かった。

右翼とか「その筋」とかの世界をどのくらいリアルに描いているのかもわからない(現実のそっちの世界を知らないので)けれど、少なくともまったくのウソを描いているわけでもないだろう。
「世の中にはこういう世界で真剣に生きてる人がいるんだなあ」という驚きというか不思議さというか。
本人たちは心底真剣なんだろうけど、はたからみたら滑稽で笑っちゃうような感じ。
でも、若者の純粋さとそれを踏みにじる大人の汚さっていうのはよく出てて、読み終わってそこはかとない無力感に包まれたのだった。

ところが映画の方は。

はっきり言って期待はずれだった。
いや、役者はなかなかよかったのだ。
窪塚、やりたくてやっただけあって「乗り移った感」すらあるし、RIKIYAも須藤元気も、役どころをしっかり掴んでで渋谷に行ったらほんとにいそうな感じだったし。
特に、次のアタマを狙う兵藤を演じた本田博太郎。
もう、20年以上もサスペンスとか専門のB級ランク俳優だけど、力はある人なんだなあって思った。
こういう芝居を見せ付けられることが、観る側の至福だよなあ、と思う。
「消し屋」の江口洋介は、あと一歩の色気と鋭さが欲しかったけど。

でも、役者は頑張ってるのに、ホン(脚本)が。
やっぱり大事だよなあ、ホン。
右翼っぽいビジュアルを観せることに拘りすぎて、肝心のドラマのほうを描く時間が足りてない。
経過を追うことに追われてしまって、小説の持つ「面白いツボ」「描くべきツボ」をことごとく外してしまって、その上、一番最後に「余計なワンシーン」が・・・。

エンドロールに流れるキングギドラのラップを、なんとなく白々しい気持ちで聴いていたのだが、そのあとに来たあのワンシーンには、一瞬怒りを覚えてしまった。
なんでこんな余計な、小説にもないようなシーンを付け加えてしまったのか。
いらないだろう、あんなシーンは。

というわけで、せっかくの面白い小説を台無しにした映画だった。

こういう「足りてない映画」を観るに付け、思う。
言葉とは偉大だなあ、と。
「百聞は一見に如かず」とか言うけれど、言葉で語る(綴る)方がよほど伝わることがある。
見る、ということは、見えているものだけしか見えないけれど、言葉というのはその裏に、言葉と言葉の間に、深くて広い世界がある。
だから脚本が大事なのだ。
若い監督さんには、もっとホンの勉強をしてもらいたいよね。
偉そうですが。でも、ほんとに。

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