全部知っている曲なのに、一つの作品となったこのアルバムの重さは何だろうと思う。
今までのどのアルバムも、「このバンドの曲にはひとつのハズレもない」と思ってきたのに、「MOTHER OF 」と銘打たれたこのアルバムは、同じ大きさでも密度が高いと重くなる、という宇宙の原理を感じさせるような。

「最後の最後に、これだけは忘れないでね」というメッセージが込められているであろう、メンバー自身による選曲というこのアルバムを、ただ聴くだけでなくじっくり眺めて見たい。

中身を分析してみる。

純粋に「アルバム」からの曲は13曲。特に6枚目、「Japanese Rockのマスターピース」と言われた「SICKS」からが多く、6曲。いかに自信作であったかということが、改めて。

「真珠色の革命時代」は厳密に言えばオリジナルアルバムからではなく「SO ALIVE」というLIVEアルバムからのもので、しかも確かこのバージョンは「SO ALIVE」の元である7thアルバムのツアーからではなく、年末の「メカラ・ウロコ9」からの収録だったと思う。
「いつかオーケストラをバックにこの曲を」という吉井和哉の夢が叶った曲。
全国全都道府県を回る、という「PUNCH DRUNKARD TOUR」があまり明るい結末を迎えそうもない、という雰囲気が強くなってきていたこの頃のライブは、見ていて辛かったことの方が多かったが、この「メカラ・ウロコ9」のときは座席が1階のど真ん中付近、近くはないけれどステージが俯瞰できる場所で、「イエローモンキーのライブを観てる」という夢見心地の幸せを感じたことを思い出す。

「8」から「カナリヤ」が入っているのが個人的にはとても嬉しい。
この曲の歌詞の意味を述べよ、なんて言われても全然述べることなんて出来ないけれど、この曲で歌われている「気持ち」とでもいうのが「形のない確かもなの」として心の中の深いところまで入ってくる。
Did you sleep well?

というフレーズ。
かごの中であの夢は一人だけの妄想にした
たとえ空が晴れていても全然忘れてない
あおむけで眠りたい

という歌詞。
こういう歌を作れる、歌える人だから、私にとって吉井和哉と言う人は特別なのだと思う。

シングルから10曲。
その中に9枚目「JAM」から14枚目「球根」までの全て・6曲が含まれている。「SICKS」の時期と重なる、黄金期のシングルたち。
楽曲としての完成度、と言う意味でも彼らにとっての自信作なのだろうし、「THE YELLOW MONKEY」というバンドのイメージを世間に決定付けた楽曲群だと思う。

カップリング曲が14曲。
私的な印象として、イエローモンキーのシングルはカップリング曲の方が「いいな」と感じることの方が多かった。

「LOVERS ON BACKSTREET」は吉井和哉が「生まれて初めて作った」という曲。
あなたが醜いブタでもいい
困ることなど何もない
というフレーズが大好き。

「夜明けのスキャット」は初めて聴いたときに鳥肌だった曲。
由紀さおりがこの曲でデビューしたのは私が小学生のときで、私はその頃からこの曲が大好きだったけれど、このイエローモンキーバージョンを聴くまでこの曲の意味に気がつかなかった。
吉井和哉は、幼い頃この曲をBGMに愛し合う両親を見て「とてもキレイだった」という話をしていたことがある。早くに父親を亡くした彼の中の男女の姿の原点というのが、きっとそのときの両親の姿に集約されているのだろうなと思う。それがあってのイエローモンキーなのだろうな、と。

カップリング曲は主に3枚目のボーナストラックに収録されているが、その中の10曲目から12曲目、「MOONLIGHT DRIVE」「HONALOOCHIE BOOGIE」「太陽が燃えている」の流れには感慨深いものがある。
数ある曲の中でも、ストレートに前向きで幸せな気持ちが歌われている数少ない曲たちなのだ。
夜明けには口笛を吹いて
Moonlight Drive
と締めくくられている「MOONLIGHT DRIVE」
Honaloochie boogie ボロは着てても心は錦
Honaloochie boogie 輝いてたいな
Honaloochie boogie 今日はダメでもいつか神様
Honaloochie boogie ロックン・ロール大臣・・・いいよね・・・
夢見る少年であった頃が綴られている「HONALOOCHIE BOOGIE」
「太陽が燃えている」はDEMO段階のもので、ギターフレーズも手探りな感じだし、歌詞もまだ昇華されていない。完成形を知っているところから聴くと、「歌いたいことがうまく言葉にならないもどかしさ」みたいなのを感じて微笑ましいような。

同じく「Original Lyric Version」となっている「追憶のマーメイド」の方は、うって変わって「産みの苦しみ」を感じさせるものだ。
この曲は吉井和哉本人がいろいろなインタビューで述べていることによれば、レコード会社側から「ヒットを狙った曲」を作るように言われて、苦しんで苦しんで作り出した曲だ。
歌詞に全くまとまりがなく、いかに言葉が出てこなかったかが忍ばれて苦笑してしまうほどだ。
ボーナストラックにこういう曲が収められているということは、「こういう苦労もあったんだよ」ということを残しておこうということなんだろう。

通常版の最後に置かれているのが「SO YOUNG」で、実質的なイエローモンキーは、つまり吉井和哉の中では、おそらくここで終わっていたのだろうと、今更ながら感じる。

この後のシングル「バラ色の日々」から他人の手が入り始めて、それは本人たちが出した結論であったとは言え「イエローモンキー」の本質みたいな部分がぐずぐずと侵食されていく感は否めなく、聴いている方にしても辛い思いが強くなっていったのだった。

こうして眺めてみると、彼らの歴史と思いがちゃんと見えるように出来てる。
私も、聴き返すたびにいろいろなことを思うことだろう。
改めて、ご苦労様、THE YELLOW MONKEY。
そして、ありがとう。

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