★アミさん、kajさんに秘密あり

この1週間パソコンの前に座る時間が無かった理由はこれ。
寸暇を惜しんでむさぼるように読み、全5巻読了。
アニメのノベライズと侮る無かれ。
「核」と「遺伝子工学」という、現実世界に置いても最先端の懸案事項をベースに、「戦争」と言うものについて考えることを真正面から迫っている。

面白かった、の一言では片付けられない深い感動が残った。

それは私が、このアニメを何度も見ていてあらすじも登場人物もよく知っているから、ということもあるかもしれない。
けれどこの小説は、そういうことを差し引いて小説単体としても=アニメを知らない人が予備知識なしに読んだとしても、十分読者を惹き付け考えさせる力を持つ作品だと思う。

「核」の使用を全面的に禁じた世界という設定の上で「核」というものがどのような「両刃の剣」であるかを描き、ヒト元来の種である“ナチュラル”という人類と、遺伝子操作の結果でより優れた能力を生まれ持つことが可能となった“コーディネイター”という人類の対立を通して「差別」という感情の恐ろしさも描いている。
そしてまた、物語の中で“諸悪の根源”の役目を背負わされたのは“失敗作のクローン人間”だ。
人の欲望の果ての結果としてのこんな“自分”を生み出した人類を憎み、滅亡に導こうとする。

どのように時代が進んでも、「戦争」というものが人同士の殺し合いであることに変わりが無いことを淡々と描き、人はなぜそのような行為を犯してしまうのか、何のために、何と戦うのか、ということを問う。
今より先へ、人より上へという欲求は、行き過ぎたとしても後戻りの出来ない人の「業」なのか、より強い兵器を手にしたら使わずにはいられない、人はそういう生き物なのか。

モビルスーツやモビルアーマーの描写は魅力的だけれど、それらはあくまでも“兵器”=「人を殺すもの」であることをきちんと描き、それらがぶつかり合う戦闘とはどのようなものであるか、どのように人が死んでいくものであるか、と言うことも、目をそむけることなく、しかし必要以上に修飾過多になることもなく描かれる。

その上で、1巻から最後まで繰り返し問うていのが「“敵である”ということは人殺しの理由になるのか」ということだ。
相手を滅ぼそうという感情はどういうものなのか、憎み合って殺しあう、それが戦争なのか、と。
そして、主人公のキラとアスランという親友同士がともにコーディネイターでありながら、キラがナチュラルの住む国で暮らし、アスランがコーディネイターの軍人になったことで敵味方に分かれてしまう、という設定を通して、本当の敵とは人をそこまで追い込んでしまう「戦争」という手段なのではないか・・という一つの答えを見せている。

二人を中心とする主要人物たちがそのことに気づいた後、彼らは敵でも味方でもない集団となって戦争を終わらせようと奮戦するが、結局双方のトップが死ぬまで戦争は終わらない。
キラたちはこれからも問い続けて行かなければならない。
どうしてこんなことになってしまったのか・・・どうしたらこんなことにならなかったのか・・・

それは現実世界にも十分通用する問いかけだろう。
特にここ数年の世界情勢を振り返れば、誰もが胸に持っていなければならない問いかけのような気すらする。

折りしも、北朝鮮が核保有を公言し、対話の座を外れた。
この事態に世界は、日本は、どう対応していくのか。

この物語に描かれた世界は決して次元の違うお話の世界などではなく、私たちのごく身近で息を潜めている世界かもしれない。

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