奥田英朗「サウスバウンド」文庫版上下を読みました。

いつも、何を読んでも大体は「面白かった〜!」と言ってる私ですが、これはそんな「面白かった」とは比べ物にならないくらいに「面白かった」、今年読んだ本の中で一番、いや、ここ数年の中でも一番、面白かったと断言できます。

「元過激派」の両親を持つ上原二郎くん小6が語り部となって進む物語。どちらかというと子供の物語、ですが実は、子供の成長譚の皮をかぶった・・・的な物語。

親を含めて大人たちはあくまでも客観的に描かれます。
大人の言うことも「子供の耳が聞いた大人の言葉」として、距離を置いて書かれているので、改めて読むと「こんなこと書いて大丈夫なのか?」と思ってしまうようなこともさらっと書かれていたりします。
ホントは、大人たちだっていろいろ考えてるはずで、子供の見てないところで悩んだり泣いたりしてるはずなんだけど、そういう姿はいっさい出てきません。きっぱりと生きていて、子供が親の背を見て育つというのはこういうことか、と目からうろこでした。
私なんか、「大人だって人間なんだから」と、悩んだり泣いたりわめいたり、そんなとこ散々見せてきてしまって。
そういうことをしない人間こそが、子供にとっての「大人」なんだと、初めてわかったというか。

だから、とりあえず少なくとも年齢的に「大人」である自分は、この小説をただただ「おもしろいっ」と読んでていいのか・・・という後ろめたさを振り払うことはできませんでした。
笑って読みながら心の中で、“わかってる、そんなことはわかってるんだけどさぁ・・・・・この「だけどさぁ」がダメなのは、わかってるんだけどさぁ・・・”と言い訳しながら読んでたような気がします。

いつものことだけど、子供たちにこそ読んでもらいたいと思うのに、「はいはいはいはい」と軽くあしらわれてしまいました(涙)

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