先週でしたが、観てきました。
感想は書かないでおこうかとも思ったのですが、ミュージカルファンとして、書いておくべきかと思い直しました。

5年前に開催された「ウィーンミュージカルコンサート2」で、メインはドイツ語圏ミュージカル界のスターさんたちだったのですが、日替わりゲストで出演した韓国のオク・ジュヒョンさんがこの「レベッカ」のダンヴァース夫人のナンバーを歌い上げ、私と娘は圧倒され、それ以来、いつか観たい、と願い続けて来た作品、「レベッカ」。

キャストは、
・マキシム・ド・ウィンター(マンダレイという広大な土地を持つ)…山口祐一郎
・マキシムと結婚する「わたし」…大塚千弘
・マキシムの親友・フランク…石川禅
・レベッカの従兄弟・ジャック…吉野圭吾
・マキシムの姉・ベアトリス…出雲綾
・保安官・ジュリアン大佐…今拓哉
・ベアトリスの夫・ジャイルズ…KENTARO
・マンダレイの海辺にいる男・ベン…tekkan
・ヴァン・ホッパー夫人…森公美子
・レベッカの幼少時からの召使でマンダレイを取り仕切る女中頭・ダンヴァース夫人…涼風真世

何といってもダンヴァース夫人の涼風真世。
真の主役、と言っても過言ではないのでは?
亡くなったレベッカの部屋で、「レベッカ様」を思い歌うダンヴァース夫人の、妖しさ、危うさと言ったら!
ダブルキャストの保坂千寿も評判良かったようで、できることならどちらも観てみたかったです。

クンツェ&リーヴァイ節炸裂の、間違いのない素晴らしい作品だった・・・と感動する反面、演出的に残念なところが1か所。
それと、主役の2人がこなしきれていない・・・という物足りなさを感じた舞台でもありました。

演出面では、1幕ラスト。
パーティーに、ある扮装で登場する「わたし」。
それは、ダンヴァース夫人の罠だったわけなんですが、あそこはもっと「タメ」が必要でしょう!
あまりにもあっさりしすぎで、不穏な空気というのが醸し出される前に幕が下りてしまった感じで、もったいなかったです。

そして、主役のお二人はというと。

大塚千弘さんは、華奢なスタイル、透明感のあるキレイな声、清純派と形容したくなる容姿は「わたし」のキャラクターにピッタリ。お芝居はすごく良かったんです。おどおどと戸惑っているうちに罠に落とされて終わる1幕から、立ち向かおうと前を向く2幕での切り替えがすごく良くて、「わたし」という人物がちゃんとそこにいました。
だけど、肝心の歌が。音程はしっかりしているんだけど、とにかく声量がなさ過ぎる。
ソロでもかなり細い歌声なのに、アンサンブルになったり、他の人との掛け合いやデュエットになると、歌声が完全に負けてしまって聞こえないのです。
それがすごくストレスでした。

そして主役の山口祐一郎氏。
劇団四季の時代を知っています。華やかなスターでした。キャッツのラム・タム・タガー、エビータのペロン、コーラスラインのボビー、どれも覚えています。
あの頃は「歌える人」というイメージだったのですが。

四季退団後の山口氏を初めて観たのが何の作品だったか、多分2005年の「モーツァルト!」のコロレド大司教だったかなと思うのですが、それ以来この方の歌に対して苦手意識があります。四季の頃からこんな歌い方だったかな、という違和感を感じつつも、好きになれず。
だけど、巷では人気があるし、ファンの方からは「歌が上手い」という評価があるようだったので、この歌い方がこの方の個性であるという受け止め方で観てきました。

けれど、今回はどうにも。

失礼ながら、もう声が出ていませんよね?というか、歌えていませんよね?
もともと、声にもなっていないような小さな声、ファンの間では(?)「ウィスパーヴォイス」と言われて好評(?)な声も、私には「何言ってんのかわかんないよ!」とストレスの素だったのですが、それでも、2016年の「ダンスオブヴァンパイア」の時には、お腹から声を出して歌い上げるようなシーンではそれなりに歌えていて、クロロック伯爵という役はこの方に合っているのだなと納得できたものでした。
が、今回は。
ウィスパーボイスはさらに「ウィスパー」になっていて、もはや歌の態をなしていないし、声を張って歌う場面でも声を出すのに必死で、メロディラインが見えてこないのです。もともとお芝居の面でもそれほど多様性のある方ではないので、歌があそこまで崩れてしまうと、とてもじゃないけど役を表現するといったことができているようには見えず。
私には、マキシムという人物の苦悩がどこにあるのか、「わたし」に対しての気持ちがどういうものなのか、さっぱりわからず。
今回、大劇場ではなく、キャパ898人のシアター・ドラマシティの6列目で観ていてこの状態というのはどうなんだ、と考えざるを得ませんでした。

レミゼやエリザなどの大作は「卒業」的な状態で退かれましたが、まだまだ主役および主要な役でキャステイングされています。
「レディ・ベス」や「貴婦人の訪問」、「マディソン郡の橋」、「王家の紋章」・・・どれも魅力的な役ばかり。
そして今回の「レベッカ」。原作は古典とも言える古い作品ですが、愛とサスペンスに満ち溢れた素晴らしい作品でした。本来ならマキシムと言う人はもっとミステリアスで、そうであるからこそ「わたし」を通して観客は翻弄され、それがこの舞台の醍醐味であるはずなんです。

上記どの作品も、きちんと歌える方での再演を切に望みます。

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