レプリカたちの夜
いろんな意味で不思議な小説です。

最初に感じた違和感は、内容もさることながら、「平仮名が多いな・・・」ということ。
「つかれてるみたいですね。昨日もおそかったんですか」とか、「かれらの顔もおもいだせない」とか、「粒山はあたりまえらしくこたえた。つまり、それだけばかげたことだといいたいらしい」とか、単語としても「はたらいている」とか「うごく、うごいている」とかが平仮名で、しばらくは「どういう基準で使い分けてるんだろう」ということが気になって仕方なかったんですが、読み進むうちに話の展開の方がよほどややこしくなって行って、表記の事は気にならなくなりました。

舞台は「動物レプリカ工場」です。

動物レプリカ工場・・・???(^_^;)

登場人物の名前も、往本、粒山、馬鯛など、わざわざ「おうもと」「つぶやま」「またい」とルビがふられているので、作者がきちんと意図して設定した苗字なんだなと思うのですが・・・そう思うと逆に謎。

ただ、その「動物レプリカ工場」で「主人公の往本が本物と思しきシロクマを目撃する」という導入部は妙に整合性があって、話にはすんなりと引き込まれます。それがまた、なんだかちょっとぞっとする感じでもありますが。

動物たちが、絶滅したとかしてないとかの会話があったりして、ある種の現代を超えた世界の物語なんだな、ということはわかるけど、それについても特に言及はされず、それが当たり前の前提で進む物語です。

新潮ミステリー大賞を受賞した小説ですが、ミステリーと言えるかどうかは微妙です。
私が唯一、ミステリー的な不気味を感じたのがシロクマで、読み終わってみれば何かのフェイクだったんだろうなとは思うのですが、まだはっきりは掴めません。
読み始めてしばらくは、椎名誠作品に似たSFを強く感じたし、読み進むうちに思ったのは、「これは、読むデビッド・リンチだな」ということ。
なので、「最後には謎が解明されてスッキリ」的ミステリーが好きな人が「ミステリー大賞」に惹かれて読んだらひどい目に遭うかもしれません。

でもね、登場人物がいろんなことを語っているのが、理屈っぽいようで結構わかりやすく、作者が書きたかったことはわかるような気がしました。

なんせ、個人的にはものすごく好きな世界観の小説です。
これが処女作とか。
二作目「ざんねんなスパイ」をさっそく書店に探しに行きます。





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