大好きな役者さんたちの競演を堪能してきました。
特に、片岡礼子さん・・・もうホントに、大好きな女優さんです。

内容は、大変重たいです。

以下、ネタバレしてますので、これから見るのが楽しみ、という方はご遠慮ください。







実際にあった「今市事件」と「山口連続殺人放火事件」をモチーフとしているようですが、それらを通して人の社会というものを考えさせられる作りになっています。

一つの町の中で起こる負の連鎖を描いているのですが・・・
少女が行方不明になり本人も犯人も見つからないまま12年が過ぎ、納得できない空気が爆発するように事件が起きる・・・ある人物を「犯人だ」と決めつけて死に追いやる・・・
妻を亡くした傷心を抱えて郷里に戻って来た養蜂家は、町の不文律を読み取れずに村八分になり、心を病んでいって事件を起こす・・・

どれもこれも、自分たちで招いたことじゃないかって、見てる方にはわかるんだけど、当人達にはわからないんですよね。
少女行方不明事件に関わってしまった紡(杉咲花)が、最後にそれに気づいて、町の入り口に出ていた「不審者を見たら110番通報します」という看板を橋から投げ捨てるという描写はわかりやすいんですが。

「楽園」という言葉については、最初の方でタケシ(綾野剛)が「楽園なんてどこにもない」と言うのと、最後にヒロ(村上虹郎・紡に想いを寄せている)が紡に「お前は楽園を作れ」と言う、その2回出てくるんだけど、私にはその「楽園」の意味はわかりませんでした。

日本の「ムラ社会」を描き、人の負の部分ばかりがこれでもかと見せられます。
ムラ社会の構造的な負の部分は、自分も60年近く生きてきていると実際に見聞きしてきているもので「あるある」だなと思う、けど、それがこんなにも絶望的な事件に繋がる様子を描写するなら、その先を見せてほしかったなと思う。
社会がこういう因習的な段階から脱却するには、的ななにかを、なにか希望というか光というか、を見せてほしかったと思いました。そうでないと、何をもってして「楽園」と言っているのかが伝わってこないような・・・私の力不足なのかもしれませんが。

少女行方不明事件の犯人捜しのような展開はなく、話の中ではある人物が「こいつに決まってる」とされるのですが・・・
ラストシーンでもそう思わせるような描写があるんですが・・・

私は、あのブルーの車がそうなんじゃないかなと思いました。
どこか外からきて、無責任に犬を捨て、無責任に少女をさらい(?)、またどこかに去って行ってそれっきり・・・
そういう「外」の存在に目を向けることなく、狭い視野の中で内々で傷つけあう愚かさ、思い込みの怖さ、なんかを感じました。
そして、少女の最後の姿を見ていた紡にはそれがなかった、という事なんですよね、たぶん・・・
ただ、それなら紡はもっと解放されてもいいんじゃないかって思ったんですよね。
「わたしは抱えて生きていく」ではなくて。
そんなものは捨てて、もっと軽やかになっていいんじゃないかって思って。それが若さだし、新しい世代への脱皮だと思うし。
そんな、前の世代が持て余してきたような負の部分を引継ぐことなんかないんです。
だから、最終的にちょっと納得いかない映画でした。

映像と音楽が素晴らしく美しく、それが救いになっています。
エンディング曲は野田洋次郎×上白石萌音。新海誠作品の匂いはどうしてもしてしまいますが、美しい印象的な曲で、どよーんとした心を浄化してくれるようでした。



コメント

yasai
2019年10月24日7:13

村で暮らすのは  たいへん なのですね 村おこし って言うけど

もりのいずみ
2019年10月28日18:37

☆yasai様
東京(生まれ故郷)と、地方都市(結婚してから住んでいる今の場所)と、ド田舎(夫の郷里)を知っていると、どこも同じようなもんだ・・・と思います。
マイナス面ばかりを強調して都会は違う、的な描き方に感じられたことには、少し抵抗を感じました。

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索