「生き物の死にざま」稲垣栄洋
「生き物の死にざま」というタイトルですが、読んでみるとそれは=「生きざま」であるのだな、と思います。
セミからゾウまで、種類を問わず29の生き物の生と死が紹介されています。

印象的なのが、多くの生き物について「繁殖行動を終えると死を迎えるようにプログラムされている」という一節。
おのずと、では繁殖行動を終えても死を迎えることのない人間は、どのように「プログラム」されているのだろう?という疑問が出てきますが、その答えは「ハダカデバネズミ」の項で語られます。
このハダカデバネズミという生き物は、「老化しない」生き物であり、すなわち「不老長寿」な生き物だそうですが、それに対して人間は細胞が老化するというプログラムを持っているということです。
生命が世代交代のために進化の過程で作り出してきたのが「老いて死ぬ」という仕組みであり、作者は“「老いて死ぬ」ことは、生物が望んでいることなのだ”と書いています。

そんなのを読むと、私という人間も、結局は遺伝子に操られているただの細胞の塊なんだなぁ、なんて不思議な気持ちになったりします。

29の生き物の中に、「ニワトリ」と「ネズミ」の項がありますが、「ニワトリ」は人間の食料になるために生まれて死ぬ「ブロイラー」について、「ネズミ」は人間の行う実験に使われている「ハツカネズミ」について、書かれています。
この2項を読むと、人間とはなんと業の深い生き物だろうかと思わずにはいられません。
その他の項目にもしばしば、人間の所業によって生物の元来のプログラムが阻害されていることが書かれていて、人間という生き物の存在意義を考えずにはいられません。
こんなにメイワクな生き物がなぜ、こんなにも繁殖できているんだろうか、と。

でも、そんな人間の生きざまも、本能のプログラミングの結果なのかもしれません。
とにかく、どの生き物も本能に従って必死にその生を全うしているのだということにしみじみと感銘を受けた1冊でした。

コメント

moco
moco
2019年11月12日3:50

本能のプログラミングですか。潜在意識とかそういうことと関わってくるのでしょうか。人間全体の意思で生きよう生きようとしているのかと思うとなんか面白いですね。

もりのいずみ
2019年11月14日3:27

☆moco様
なんというか、一人一人や一匹一匹の命じゃなくて、種としての命なんだなーと。それが自然界のメカニズムなんだなとすごく納得しちゃう本でした。

まるこ
2019年11月14日10:38

生き様が種により違う。興味深いですね。今私が人として生きることも理屈でなくプログラミングされているのかな?と思うと色々な事が乗り越えられそうに思えて不思議です。それぞれに生きて死ぬ意味があるんですね。読んでみたい一冊です。

もりのいずみ
2019年11月27日12:19

☆まるこreborn様
コメントいただいていたことに気付かず、お返事が遅れましてすみません(-_-;)
考える脳を持っていると、いつもいつも「これでいいのか?」と思いながら生きることが、しばしば辛いと思ってしまうのですが、そんな自分も元をただせばDNAのプログラミングで生かされているんだと思えば、すごく気が楽になるんですよね。それぞれに与えられた生を、ただ一生懸命生きて死ねばいいんだ~、と納得できてしまうのです。

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