映画「カノン」

2020年7月21日 映画
映画「カノン」
2016年の邦画。アマプラで鑑賞。

ミムラ(現在は美村里江)、比嘉愛未、佐々木希、鈴木保奈美、多岐川裕美、古村比呂、島田陽子、という豪華女優祭りな映画。
ミムラ、比嘉愛未、佐々木希の三姉妹は祖母に育てられたが、その祖母が亡くなり、遺言から死んだと聞かされていた母親が生きていることがわかる・・・というところから始まります。

三姉妹は母と母の人生を追う中で、母を理解し受け入れていく、という物語。

鈴木保奈美演じる母は、賢くもなく美しくもなく気が利くわけでもない凡庸な女性で、不幸の中で酒におぼれ、子どもたちを虐待する母になってしまう。
姉妹の知らなかった母が祖母の遺言から見えてきて、子ども心に焼き付けられた、そういう「愛せない母、許せない母」にも必死な人生があり、汲むべき思いがあるんだよ、ということが言葉によってではなく語られています。

この母の物語を軸に、そのトラウマを抱えたミムラのモラハラ夫-妻の態度に難癖をつけて、いちいち「反省文」を書かせる-のことも描かれます。
母の、堕ちていくばかりの苦しい人生の描写と並行して、姉妹が力を合わせてこの姉を救う過程が描かれ、最後は比嘉愛未の結婚と三姉妹のピアノ連弾という美しい絵と音楽で締めくくられ、深刻な物語でありながら、明るく穏やかで優しい気持ちの残る、とても素敵な映画でした。

そして、人は失敗しても許されていいのだと、素直に思える映画でした。

私自身のこととして、母が我を失った状態になってからずっと、私はいつか母を許せるのだろうか、許す時が来るのだろうか、となんとなくいつも考えています。
私自身の中には「許したくない、許してはいけない」という思いがまだ明確にあるのですが、背中合わせに「どこかで許すべきなんだろうか」という思いもあるからで、この気持ちに折り合いの着く時がくるんだろうか、というのはここ数年ずっと頭の中に、水底に沈んだ石のようにあることです。
そんな心に少し波を立てて、石を動かしてくれたような感じを受けました。
映画を見たからと言ってすぐに答えが出るわけではありませんが、なにか、いつか答えが出せそう、というような希望が持てたというか。

鈴木保奈美さんがすごいです。役者魂を見たというか。
島田陽子さん、すごく久しぶりにお会いしたというか。アルコール依存症から立ち直ろうとする母を毅然と支える役どころで、優しすぎても厳しすぎても違ってしまうという、とても難しい役を的確に演じられてました。
比嘉愛未の恋人の母の古村比呂さんの、まっすぐな優しさ、というのにも、ものすごく救われます。

こう思い返しても、全体的にとても優しい映画だったなと改めて思います。
雑賀俊朗という監督は存じ上げなかったのですが、私より2歳年上の方のようで、ほぼ同年代の男性でこんな優しい映画を撮られるなんて、と軽い驚きがありました。
機会があったら他の作品も観てみたいです。

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