凪良ゆう「流浪の月」★ひとつ
本屋大賞を取って絶賛されているので読んでみたんですけどね・・・

う~ん・・・・・

若い人には共感される作品なんだろうかね。

オバサンには、自分ではなんの努力もしないで、わかってくれない周りが悪いって言ってるだけの話に思えちゃったけど。

主人公の更紗は、子どもの頃にいろいろ辛い目に合ってるんですよね。
常識の規範を持たない両親に育てられちゃったことも、優しかったパパが早死にしちゃってママが恋人とどっか行っちゃったことも、引き取ってくれた叔母さんが優しくなかったことも、そこの息子に性的虐待を受けたことも、そりゃ、不幸なことだったと思う。

その後、更紗にとっては救いだった文(ふみ)との出会いも、世間では「幼女誘拐事件」の被害者(更紗)と加害者(文)にされちゃって、事実は180度違うのに、誰にもわかってもらえない。

口さがない世間も酷いし、無責任なマスコミも酷い、それは確かな事だけど。
でも、わかってもらおうとする努力というのも、必要なんじゃないのかなと思うんだけど。
更紗は、肝心な事はなんにも言わない。
「私は何にも悪くないのに、なんで私の方が努力しなきゃいけないの?」っていうようなものを感じるんだよね、この小説からは。
周りが気付けよ、みたいな傲慢さを感じるんだよね。

いや、言わなきゃわかんないことはいっぱいあるからね。
そこを想像して、人と対する時は常に、この人は心にどんな闇をもってるかもわからないから、って注意して対しましょうってことが言いたいのかな、この小説は。

最近は、人づきあいがホントに難しくなっちゃって、私も思った事を気軽に口に出せなくなっちゃってるけど。
だけど、こういう小説を読むと、まず自分を見せるってことが必要なんじゃないかって思う。
まず自分を知ってもらう事、その努力、をせずに、わかってくれない周りを責めるのは違うんじゃないって思う。

大人になって、亮くんという恋人ができて、結婚の話が出るんだけど。
更紗は、自分の本音はいっこも出さないで、本心をいっこも晒さないで、内心でいつも「この人はわかってない」とか「どうせわかってもらえない」とかブツブツ。
この亮くんも、実は心に傷を負っていてDVのケがある男だってことが後になってわかるんだけど、私にしたら、この亮くんの方がよっぽど努力してる。
更紗を大事にしよう、一緒に生きて行こうって本気で考えて、自分の過ちもわかってて、今度は失敗しないぞってすごく頑張っているように見える。

更紗は結局、文と暮らした感覚が忘れられないわけで。
そりゃそうだよね、どんなことも否定されず、むしろ肯定されて好きなように暮らせたら、そんな幸せな事はない。

結局最後は、更紗と文は再会して、男女という関係ではなくお互いに必要な存在として一緒に暮らしていくことになる。
作者はそういう二人をある意味、人としての理想を提示したつもりなのかもしれないけど。
でも、文という人には主体性がない。自分に自信を失っていて(謎の病を抱えている)更紗がしたいと思うことに追従するだけの人に見える。
お金があって、料理や身の回りのことはなんでもきちんとできて、こちらの希望はなんでも通してくれて、sexはしなくてよくて、なんて、そりゃ理想的だわ。

更紗がどう思おうと、世間には多くの人がそれを頼りに生活している「常識」っていうものがあって、文との関係なんて特に、世間から見たら非常識の最たるものになるわけだから、わかってもらいたいならわかってもらおうとしないとダメだと思うんだけど、その努力を放棄するのがこの小説の結末。
私たちは人とは違うのよね、それでいいのよねー、という、上から目線の自己満足。

私にはいっこも釈然としませんでした。
「生きたいように生きる」ことと、「自分勝手に生きる」ことは、絶対的に違うと思うんですよね。

文章は読みやすいです。
でもなんていうか・・・文学、とは違うような気がする。
最近良く感じることだけど、「読むマンガ」的な?

難解なのがいいとは思わないけど・・・うーん・・・・・


コメント

G−dark
2020年10月1日12:38

苦手なタイプの主人公ですね。
自分から相手に考えを伝える努力をしようともせず、相手に「わたしが何も言わなくてもわたしのことを分かってよ。なんで分かってくれないの?」と要求する人、現実でもいますよね…。
こっちは超能力者じゃないんだから、あなたの頭の中のことなんて分かりませんよ!と言いたくなってしまいます。
ちゃんと言葉にしないと伝わらないことって沢山ありますよね。

もりのいずみ
2020年10月1日13:30

☆G−dark様
書店員さんの評価が高い「本屋大賞」を取ってるし、レビューでも絶賛の声が多いんですね。こういう小説が受けるというのは、疲弊していてこんな風な救いを夢見てしまう人が多いのかなぁと感じました。

主人公の生い立ちは不幸だし、全く本人には非が無いのも確かなんですが、それに対してだれも責任を取らず、そもそも作者にそういう視点がなく、すべて自分で背負って消化しようとした結果、こういうやり方が一番楽になれる方法だった、それの何が悪いの、という論調が感じられます。
一見、多様性とか他者への思いやりなどをテーマに載せているように見えますが、結局作者の答えは「ひとのことは放っておいて」であるように思えて、「自己責任」とか「自助」とかの言葉が幅を利かせる世の中になってきていることを象徴するような小説だなと感じました。

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