大好きなお父さんとお母さんから愛情たっぷりに育てられたちひろだが、その両親は、病弱だった幼少期のちひろを治した“あやしい宗教”を深く信じていた。中学3年になったちひろは、一目惚れした新任のイケメン先生に、夜の公園で奇妙な儀式をする両親を見られてしまう。そして、彼女の心を大きく揺さぶる事件が起きるー。
-公式サイトよりのあらすじ
一言で感想を述べるのは難しいけど、すごく心に残った映画。
・・・っていうか、私はこの映画、すごく好きかもしれない。
新興宗教にハマっている両親。だけど、自分にはごく普通の、大好きな両親。
両親が宗教にハマる過程を見ていた姉は、両親に対して批判的で家を出てしまう。
叔父さん一家も心配して、なんとか洗脳から解こうとする。ちひろを両親から離そうとする。
中学3年のちひろは、それぞれの思いがわかり始めてはいる。
だけど、自分はどうしたいか、というところまではまだ、たどり着けていない。
学校の友達や保健室の先生といった、家族の一回り外にいる人たちの優しさが、私はすごく嬉しかった。
保健の先生は、ちひろのゆらぎをちゃんと受け止めてくれる人で、こういう先生はいいなぁと思った。
対照的に、岡田将生のイケメン教師はクソ。無神経で傲慢。でも、こういう人は多い。
ちひろのことも、平気で傷つけてくるけど、友達のなべちゃんが一言で救うんだよね。
このシーン、ホントに良かった。
宗教の合宿(?)のシーン、凄いと思った。
というのも私、ああ、こういう集団の中に入れたら心地いいかもって思ってしまったから。
ハマってしまうのもいいかも、楽になれるかもって。
ここだけ見たらね、幹部のお兄さん(高良健吾)、お姉さん(黒木華)みんな優しいし、分かり合えてる家族のような友達もいるし、集会の度に抽選で決められた席に座って「隣り合った人と交流しましょう」とかいっていろんな人と話をして、同じ信仰を持った人と新たに知り合えて、みんなで会の歌とか歌って、きっとすごく一体感が得られてエクスタシーだろうなって。
でも、普段は水だけでなく生活必需品(以外も、かも)すべてこの会から買っていて、生活がどんどん貧しくなっていってる描写もさりげなく入っていたりもするんだけど。
そういう中でちひろは暮らしているわけで。
これから大人になっていく中で、どっちに進んでいくんだろうって思わずにはいられないんだけど、ラストシーンがね、もうすごい。
3人で満点の星を見上げるシーン。カメラが後ろに回ると、ちひろをお母さんがしっかり抱いて、お父さんがお母さんの後ろから二人をしっかり抱いて。
三位一体のようになってるんだけど、でも見てる景色はそれぞれなのよね。
「3人で一緒に見れなくちゃ」ってお父さんは言うんだけど、3人で必死に目を凝らすんだけど、3人一緒に同じものは見れないんだよね。
なんか、それでいいんだ、ってすごく納得するラストだった。
黒木華さん演じる幹部も、まず衣裳がもう秀逸。あの、ちょっと時代から外れたようなシルエットといい、おしゃれには一ミリも関心がありませんといった色使い、肩がちょっとパツパツで背中に攣りしわが出ているジャケットといい、「いかにも」感がすごい。
で、この方が2回ほど仰るお言葉がまた非常に示唆的で。
強要してない、以上に、誘ってもない、でも多分この中に入ってしまったら、きっと信奉してしまうだろうなっていうオーラ。
そんな「形」のはっきりしないものを、こんなにもわかりやすく形にして見せてしまう脚本も演出も衣裳も役者さんも、すごい。
で、なによりもすごいのは、芦田愛菜ちゃんですよ、もう芦田愛菜さん、というべきか。
両親の正しい愛情によって素直に育った中学3年生、大人の階段に片足乗せてるけど、片足はまだ子どもの方にある、っていう年ごろの感じがもう絶妙で、そんな中で世間が見え始めていて揺らいでいる中で自分をしっかり持とうと一生懸命な、ホントに愛おしい女の子でした。
いやー、ちょっと、もう一回観に行きたい。
今度はもっと注意深く観たい。
公開からまだ10日なのに、もう早朝とレイトショーの時間にしかかかってなくて、仕方ないので早起きして行ってきました。
溜まったポイントで観たので、お金もかからず。
観客は私とあと1人だけ。ど真ん中の席で、ゆったりコーヒーを味わいながら鑑賞。
買い物済ませて、お昼には帰宅。
贅沢なひとときでした。
原作も読んでみたいと思います。
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